17〜18歳くらいのBMX乗りだた頃、
楽で身を守れる恰好が好きだったので
リーゼントにディッキーズにラージのシャツとかでふらふらしていました。
すっぴん、常に肘や腕は傷だらけの、ばんそうこう?なにそれうまいの?
っていうなま傷だらけの奇妙な、そして男のような感じ。
 
 
そんなある日、深夜の上野の歩道橋の上での練習中に愛機が大破し
(バックバニ→バニホからハイに行こうとしてチャリを歩道橋から落とした)
その当時の先生的先輩に残骸を預け泣く泣く歩いて帰っていた所
前の方を女性が一人、歩いている事に気が付きました。
 
確かOLっぽい綺麗目な恰好で、高めのヒールが素敵だった。
 
私の歩く道は大体街灯が少なく、比較的暗く狭い道が多く
夜は中々スリリングであるので、
前方を歩く女性が私より大幅に身長が低く、
綺麗な恰好とヒールということに
「ああ、深夜に華奢な女性の独り歩きは危ないなあ」
なんてぼんやり思ったりしていたのを覚えています。
(私は恰好が男っぽいのと、当時BMXのお陰で全身かなり筋肉質だったので
そんな無駄な心配はまったくなかった)
 
時々、心配そうに女性がきょろきょろしたり振り返ったりしていたのも
そう思った原因かも知れません。
 
私は一人で歩くとき、歩幅が広くなり速くなります。
そして愛機を壊してしまったショックで微妙に興奮状態にあり
ゆえにその時の歩く速さは尋常ではなかったかもしれない。
下向いてムッツリ歩いてた。
 
 
少しずつ女性に近づいて行っている状況で
 
そう、私は彼女に勘違いされたわけです。
痴漢に。
 
 
暗い一本道、女性に徐々に近づきつつある。
そしてふと気付くと女性は携帯で誰かと会話をしており
時々こちらをそっと振り返ったり。
女性との距離10mくらいのとき、
突然女性が髪を振り乱しながらキッとこちらに振り返り
あらまあ嫌な予感.....と思ったら
『だれかーーーーーーー!!!!!!』
って叫びながら走り始めたわけです。
 
当然私は女なので、女に痴漢するわけがないのですが
恰好も恰好だし、その女性よりも身長高いし、で
まあ警戒されても仕方ない と、今なら素直に思います。
 
ところがその時の私は、愛機大破による精神・肉体的ショックで
陰鬱な興奮状態にあったので
痴漢に間違われた事が怒りを通り越した所にあるスイッチを押した。
 
 
高いヒールと小さな身体で一所懸命走り逃げる女性
それはあのときの彼女の精一杯だったでしょう
携帯を握りしめているのはわかりましたが
相手(話し相手が居たかは不明。演技?)に助けを求める事はせず
ただ切れ切れの声でたすけて、ちかん、だれか、を連呼し
 
今でもはっきり覚えているあのスイッチの瞬間。
私の右耳の後ろの上あたりが『ピヂッ』て音を立てた。
 
 
気付けば私も全速力で走り出し
女性の真後ろまで即座に辿り着き
クヒャヒャヒャヒャ!と笑いながらそのまま追い抜き
その全速力のまま家の近くの公園まで向かい
 
で30分ほど泣いてから帰りました。
(泣いた理由は愛機の修理に2週間かかるとメールが入っていたからです)
 
いつもならば20分くらいかかるところを5分くらいで到着した気がする。
 
 
 
 
 
女性がどうなったのかは知りません。
 
  
おわり。